股関節脱臼とはなんですか?
 股関節脱臼とは、大腿骨(ふとももの骨)が骨盤の中の寛骨臼(受け皿の骨)から外れた状態を言います。先天性と後天性の場合があります。0.1〜0.2%くらいの赤ちゃんに見られる病気で、4ヶ月検診で行う開排制限という股の開き具合をみる検査で分かる場合が多いです。また,女の子の方が男の子よりも5〜10倍くらい多いとされます。
 赤ちゃんには痛みはありませんが、歩行期以降となって歩行困難(びっこ)となって気づくことがありますが、時期が遅くなるほど整復が難しく、後遺症も残しやすくなるので、早期発見早期治療が望ましいです。
 股関節脱臼の家庭での判別法はありますか?
 足の長さが左右で微妙に違ったり、太股のしわの数が左右で違ったりした場合、股関節脱臼の可能性があります。ただし、これも絶対的なものではありません。
 なお、脱臼になる足は、左足:右足:両側=2:1:1の割合とされ、さらに、顔の向き癖と逆側になりやすいというデータがあります。ちなみに、うちの娘の場合は左足でした。
 股関節脱臼の治療法は?

生後6ヶ月くらいまでで脱臼の程度が少ない場合は、リーメンビューゲル(バンド型の装具)を3〜4ヶ月くらい装着することで、約8割が直ります。
 しかし、脱臼の程度が大きい場合、又は生後7ヶ月以上の場合は、入院して牽引療法で整復後にギブス固定。そしてさらに、3〜4ヶ月くらいのリーメンの装着となる場合が多いようです。
 また、それでもうまくいかなかった場合、又は2・3歳以上の年長となると、手術が必要となる場合が多いです。

 リーメンビューゲル(装具)ってどんなものですか?
 うちの娘のは、肩と胸、胸と足をベルトでつなぐタイプです(胸のベルトに4本のベルトがついています。)。
 ベルトを初めて外した時、肩に回るベルトの背中側がクロスになることを知らなかった(よく見ないで外してしまった)ため、まっすぐ胸に下ろしてつけていました。そしたら、背中のベルトが妙にだぶついてしまっていて、変だな〜って思っていたところ(そのまま何日かつけていた)、検診に行って改めて、つけ方の間違いに気づきました。
 うちの娘は、肩のところのパットがよくズルズル移動してしまっているので、その度にズルズルと持ち上げて直しています。
 リーメンビューゲル(装具)をつけても赤ちゃんは大丈夫ですか?
 うちの娘も最初につけた時は、大泣きで5分とベットに寝なかったため、ずっ〜と抱っこでした。こちらも何も出来ず、トイレにも行けないような状態で、娘を抱いて家の中をウロウロしていました。小さいながらも「ママなんとかしてよ!」って目で訴えるんですよね。最初の3日は大変だと聞いてはいましたが、こんなにもグズルのかという感じでした。新生児の時の方がまだ楽ですよ。
 ずっと泣いている娘を抱いて、主人の帰りを待ち、本当にせつなくて、こっちまで泣けてきました。仕方が無く、自分を励ますかのように、娘に、「助けてあげられなくて、ごめんね。あんよが治るように我慢しなさいね。」って言い聞かせてました。
 大変ですが、抱っこされていると安心してウトウトできたようです。私は、疲れたらソファアなどに座って、ラッコにのようにお腹にもたれかけさせて、寝かせていました。
 夜は、いつものようにベビーベットに寝せましたが、やっぱり頻繁に泣きました。その度に抱っこでユラユラして寝せてましたが、こちらも昼間からの疲れで続かなくなったので、途中で私のベットに入れたら、何度かは泣きましたが、少しは眠ることができました。
 赤ちゃんは適応力があるから(多分、小さいながらもけなげに諦めてるのかも。)、今日よりは明日とだんだんグズらなくなり、3日もすれば普段どおりになりますよ。
 リーメンはつけた日が一番大変だと思います。うちは3回もつけはずしをしているので、よくわかります。先週つけた時は、ストレスからか、38.7℃の熱がでてしまい、夜間救急センターに行きました。熱は一晩で下がりましたが。
 お風呂はどうでしょうか?
 病院での入浴指導では(一人が両股関節を押さえ、もう一人が体を洗う。)初リーメン二日目からお風呂に入れることができました。 

 ちなみに、牽引後のギプス生活中は、胸から足首までのギプスでしたので、さすがにお風呂には入れませんでしたので、タオルで体を拭いていました。石膏の通気性の悪いものだったので、ミルクを飲むたびに、大汗をかいてかわいそうでした。
 病院によって、入浴の可、不可がみたいです。関節が安定して、早くお風呂に入れるようになるといいですね。
 入院しての牽引治療について教えてください。
 娘は、5ヶ月1日で牽引治療をしました。幸い、個室で、完全付き添いができましたので、付き添う方も心身共にすごく大変でしたが、様子をずっと見ていられたので、安心して治療を受けることができたように思います。
 牽引時の姿勢は、ベットにはり付け状態です。ベットに固定されたベストを着て、牽引時に体がずれないようにします。足には、牽引用のバンド(トラックバンド)を包帯でグルグルととめて、その先にフックを付け、重りを吊します。
 牽引段階は、3段階に分かれ、2段階までは入浴(私が入れてました。)、抱っこや授乳もOKで、4時間位おきに休憩があり、看護師さんが包帯を巻き直してくれたり、オムツを交換したりしていました。娘は、最初は、慣れないためすごく泣いていました。あまりぐずっている時は、牽引をはずし、抱っこであやし、寝むってから引いていました。2段階までの付けはずしは、こちらで行って良いという許可がでていましたので、私がしていましたが、あまり頻繁にはずしてしまうと、最後の段階が可愛そうだと思い(最後は、一切起こせなくなるため)、泣いていても、我慢をさせることも度々でした。

〔1段階〕

1日目…<水平牽引>両足をまっすぐ下に引きます。重りは、脱臼の程度によって、個人差がありますが、右(1キロ)左(1.5キロ)で引きました。
2日目〜4日目…<水平牽引>右(1キロ)左(2キロ)、レントゲン撮影で関節の下がり具合をチェックして重りを調整しました。下がりが悪い場合は、重りを重くするそうです。ドクター曰くこの段階が一番つらく、皆グズルそうです。重りも重いため、看護師さんによっては、包帯がすぐに弛んで外れてしまいました。付き添う方も、重りが床に着かないように見ていました。

〔2段階〕

5日目〜7日目…<垂直牽引(90度)>両足をまっすぐ上に上げます。右(1キロ)左(1キロ)で引きます。
8日目…<牽引角度100度>頭側に足が倒れます。
9日目…<牽引角度120度>さらに頭側に足が倒れます。

〔3段階〕…一切起こせません。寝たきり状態。

10日目…<整復牽引、開脚45度>
11日目…<整復牽引、開脚60度>
12日目…<整復牽引、開脚70度>
13日目〜15日目…<整復牽引、開脚80度>1日4〜5回、左股関節の回旋運動をするようにドクターから指示があり、実施しました。
16日目…<関節造影実施>全身麻酔をかけました。
 幸い、牽引により関節が入っていましたので、関節造影の際に徒手整復をせずに、検査だけでした。検査終了時から、石膏ギプスになりました。
17日目〜18日目…<経過観察>退院後のギプスの管理方法などの指導を受け、退院しました。

 退院後は、毎週1回通院し診察を受け、2週間後にギプスの作り直しをし、1ヶ月でギプスが外れ、現在リーメン生活中です。
 入院中は、ストレスのためか、ミルクの飲みが悪くなり娘の体重がだいぶ減ってしまい心配しました。ベットに縛られ泣いている娘に何もしてあげられなく、本当につらい毎日でした。
 入院の時、肌着とかどんなものを準備しましたか?
 肌着も、前あきがいいんですよね。でもこの時期(70か80)の肌着って、ほとんどが股下にボタンがありませんか?股下は何もない方がいいんですよね。 うちは、入院前のオリエンテーションで、ロンパースを準備するよう言われました。着替えが楽かな〜と思って、80の前あきボタンのものを用意しましたが、正解でしたね。それを着せ、まだ寒かったので、その上に長袖のTシャツを着せていました。ズボンは当然いりません。両足は足の付け根から包帯でグルグル巻きですからね。夜は冷えるので、足先だけ短い靴下をはかせて、バスタオルをかけていました。なので、股下にボタンのある普通のロンパースで問題ないと思いますよ。お腹が冷えなくていいですよ。 いろいろと準備が大変だと思います。私も入院に際しては、ミルク用品やら加湿器やら、親子でほとんど病院に住んでいたという状態だったので、洗濯石けんまで持参していました。
 どんな病院だったんでしょうか?
 もちろん、病院によっていろいろで、参考までに私の場合についてご説明しますね。
 そこは、県の肢体不自由児の施設なので、かなり古くてこの点だけでもかなりへこんでしました。 
 県の施設はやっぱり、どこも老朽化が進んでいるようですね。建物といい、部屋の中といい、薄暗くてあの中で毎日過ごすのは、本当に気が滅入ってしまいますよね。おまけに我が子は「ぎゃーぎゃー」泣くしで、鬱になってしまうお母さんも多いと、看護師さんが言っていました。
 今はどんな様子ですか?
 3度目のリーメン生活を開始して1ヶ月経った今は、本人が自分で動かしている分には、脱臼する可能性はほとんどなくなりましたが、臼蓋の形成がまだ不十分なため、あと四ヶ月位は、経過を見ていくことになりそうです。もし、それでも臼蓋の成長が見られなかった場合は、形成手術をすることになります。
 固定している時の注意点としては、外した時などに足をまっすぐ下に伸ばさないことと、抱っこの時は、お尻を抱えて抱っこすることですね。

(写真は足のリーメンを外して大喜びでジダバタしてるところです)


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